(イタリア出張記:サルヴァトーレ・ソレンティーノを訪ねて①の続きです)
打合せを終え、ランチとコーヒーブレイクを挟んで、彼らのショップがあるVietri sul Mare(ヴィエトリ・スル・マーレ)へ向かいました。
イタリアでは「バル」と呼ばれるカフェにふらっと立ち寄ってエスプレッソを一気に飲む文化があり、彼らも本当によくコーヒーブレイクを取ります。
滞在中、私も何度もそのリズムに加わり、濃厚な一杯とともに束の間の休息を楽しみました。

美しい街、Vietri sul Mare
Vietri sul Mareは、世界遺産・アマルフィ海岸を構成する街のひとつ。
陶器の街としても有名で、色彩豊かなタイルや皿が街角のあちこちを彩っています。
海岸線を望む坂道の途中から見える光景は息をのむほど美しく、「この土地の明るさが、サルヴァトーレ氏の感性を形づくっているのだろう」と感じました。
それは、単に日差しの強さや空の青さではなく、街そのものが放っているものでした。
海沿いの家には黄色やコバルトブルーのタイルが貼られ、通りを歩くと、窓辺の陶器が光を反射してきらりと輝きます。
店先の人々や道行く子供たちは、まるで昔からの知り合いに話しかけるように声をかけてくれ、そこに住む人たちの温かみを感じます。
光、色、人の距離感、それらすべてが混ざり合って、この街独特の“明るさ”をつくっている。そんな土地で育まれた職人たちの感性が、鞄ににじみ出ているのだと実感しました。

彼らのショップには、多くの観光客が訪れるそうです。
特にハイシーズンには鞄が“飛ぶように売れる”とのことで、街の活気と職人の手仕事が見事に調和しているのを感じます。


ナポリ近郊の工場へ
その後、ナポリ郊外にある協力工場を訪問しました。
サルヴァトーレ・ソレンティーノは、Cava de' Tirreni(カーヴァ・デ・ティレーニ)に自社工場を、ナポリ近郊に協力工場を構えています。
今回は後者の工場を見学させていただきました。
工場では5名の職人が作業しており、1名が革のカットを、残りの4名がハンドルの取り付け作業を担当していました。
作業の合間にもエスプレッソを楽しみながら、談笑とともにものづくりが進んでいく光景は、まさにイタリアらしい温かさに満ちていました。
スタッフたちは自然体で作業を進めつつ、話しかけると手を止めて、革の状態や工程の意味を説明してくれます。
手順書ではなく、人間が工場のリズムを作っていると感じられるそんな温かさでした。
今まで私が見てきた日本の工場では見られない、少し“適当”に見えるほどの肩の力が抜けた空気がありました。
革の香りとエスプレッソの香ばしさが混ざり合う空間──
その中で丁寧に一つひとつ形作られていく鞄は、まさに彼らの感性と手の記憶の積み重ねから生まれていると感じました。


現場で感じたこと
普段は完成した製品しか目にしませんが、こうして実際の現場で、革が裁たれ、縫われ、形になるまでの工程を見ると、改めて“ものづくりの奥深さ”を実感します。
それは、私自身のものづくりへの考え方が変わる体験でもありました。
これまでは、工程がシステマチックに管理され、精密に制御されていることが“正しいものづくり”だと信じていました。
しかし彼らの工房では、職人の判断や手の感覚が作品に影響していきます。
その姿を目の当たりにし、人の感性が介在する余白こそが、鞄を単なる工業品ではなく“工芸品のような存在”へと引き上げているのだと、考えを改めることになりました。
ブランドの背景や価値を、自分の目で見て、肌で感じられたことは何よりの収穫でした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、工房で見た新作製作の裏側や、イタリアの街角で出会った美しい風景たちをご紹介します。
どうぞお楽しみに。
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